ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 彼女の方もまた同じように俺をライバル視していると知ったのは、それから五年後。

 瀬戸山園の社長に就任して一年が経ち、ようやく社長としての自分に自信を持ち始めた頃だった。

 父が懇意にしており、会社としても繋がりを持つ華道家のイベントで、俺は彼女と再会を果たした。

 俺は会場に彼女が来ていると知らなかったが、どうもこちらを睨みつけてくる女性がいるなと思ったら、それが苑香だった。

 敵意たっぷりの視線だったが不快ではなく、彼女に見られていることがくすぐったい。

 そんなに見つめるなと自意識過剰じみた思いを抱きながら、高鳴る鼓動の音を聞く。

 これまで幾度も思ってきたことだが、苑香はやはり、俺にとって特別な女性なのだ。

 十代の頃のあやふやな初恋とは違う確かな気持ちが、俺の胸に息づいていた。

 その日、偶然にも恋人と破局した苑香はとても傷ついていて、俺は半ば強引に彼女のマンションまでついていった。

 苑香を泣かせた男のことが許せなかったし、手放したのならもう二度と触れるなとも思った。

 彼女を傷つけるすべてのものから、俺が守ってやりたい――。

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