ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
しかし、余裕ぶって自分を抑えられたのは結局その日だけ。
日に日に増す独占欲に従い俺は彼女に贈る指輪を用意し、それを渡そうと再び彼女のマンションを訪れた時には、こらえきれずに苑香の唇を奪ってしまった。
その後勢いで持ちかけたデートでの勝負は有耶無耶になったが、俺は負けたとは思っていない。
苑香が俺のアプローチに揺らいでいるのは明白で、あと少しだけ彼女の心を開くことができれば、無理やりそこに押し入って俺でいっぱいにしてやろうと画策している。
だいたい、勝負に負けたらきみにはもう構わない――なんて、最初から守れるはずのない約束だった。
十八の頃から持ち続けているこの気持ちは、そんなに簡単に手放せるものじゃない。
合鍵を渡そうとした時にも思ったが、彼女は仕事とプライベートのバランスをうまく取れないことを気に病んでいる。
生き生きと仕事をする彼女に惹かれた俺にはそんなこと大した問題ではないのだが、真面目な彼女にとっては無視できないことらしい。