ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 瀬戸山園が彼をイメージキャラクターに起用した時、彼はまだ人気絶頂というわけではなかった。

 しかし、爽やかな雰囲気に甘めの風貌、少し舌足らずな喋り方が母性本能をくすぐると、SNSを中心に少しずつ注目を集め始めていた頃だった。

 俺は芸能界に疎く、広報担当者の提案なら間違いはないのだろうと彼の起用について特に異を唱えなかったが、今ではその判断を後悔している。

 彼は瀬戸山園のCM出演で一気に人気が高まると、徐々に仕事関係者に横柄な態度を取るようになり、現場に遅刻したり無断で休んだり、また連日夜遊びに出かけたりと、やりたい放題だったそうだ。

 中でも女癖が最悪で、共演者やスタッフ、コネクションのある女性経営者などを甘い言葉で誘惑しては食べ散らかし、親しい人間にはそれを武勇伝のように語っていたらしい。

 相手が自分より稼ぎのある女性だと、小遣いをせびったりすることもあったようだ。

 だから、苑香の元恋人が彼であったことを知った時、思わず言ってしまったのだ。

『男を見る目がなさすぎる』――と。

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