ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
そんな彼の悪事がとうとう白日の下にさらされ、事務所は彼を庇うことなく解雇。
中路遼太の自業自得としか言いようがないが、この騒動をダシに彼が再び苑香に近づく可能性を思いつくと、胸の中にざらりと嫌な感情が漂った。
単なる俺の思い過ごしであればいい。しかし、苑香の無事を確認しなければ落ち着けそうにない……。
本人の番号に電話をかけるか迷い、俺は美吉ブロッサム本社に連絡を取ることを選んだ。
俺からの電話だとわかったら出てくれない可能性があるし、万が一中路と接触していたら、他の男からの電話に彼が逆上しないとも限らない。
電話に出た女性社員によると、苑香はすでに退勤したとのことだった。
考えるより先に体が動き、会社のそばでタクシーを拾って彼女のマンションへ急ぐ。
幸い渋滞などにはつかまらなかったが、気持ちばかり焦って何度も腕時計を見ては気を揉んだ。
マンションの前まで来ると、車の窓から人影がふたつ確認できた。
まさかな……。
嫌な予感が当たらないよう願いながら、飛び出すようにタクシーを降りる。