ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 出会いのきっかけは、彼がまだ劇団俳優だった頃に偶然居酒屋のカウンターで席が隣になったこと。

 俳優としてまだ日の目を見られていない彼と、美吉ブロッサムを大きくしたいと思いながらも思うように結果を出せずにいた頃の私は、とても話が合いお酒が進んだ。

 お互いの夢について恥ずかしげもなく語っては励まし合って、その盛り上がりのままホテルに誘われて、つい、一夜を共にした。

 ふたりとも酔っていたし、遼太くんは若いからきっと本気じゃないのだろうと思っていたけれど、翌朝無邪気に『苑香さんと付き合いたい』なんて言われて、私はコロッと落ちてしまった。

 お互い忙しいから束縛はナシにしようと約束して、無理せず会える時だけ会うというルールも決めた。その関係がとても心地よかったから、遼太くんも同じなのだとばかり思っていた。

 ただ、去年の春に遼太くんが瀬戸山園の『母の日イメージキャラクター』に抜擢されたからは、彼の知名度がグンと上がって、会える日が激減したのは確かだった。

 私が瀬戸山統を必要以上にライバル視してしまうのも、その辺りが少し関係しているのかもしれない。

 瀬戸山園のカーネーションを手に微笑んでいる遼太くんのポスターを見るたび、複雑な気持ちになったから……。

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