ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
その時、タイミングよく父から電話がかかってきた。蘭子さんも一緒に、うちの実家で食事をしているという。
父が誘ったのか、蘭子さんが外彫りを埋めようとして躍起になっているのか。
どちらにしろふたりまとめて黙らせないと、苑香をまた不安にさせる。
中路の来訪に心を弱らせていた苑香のそばにいたい気持ちもあったが、俺はすぐに実家に帰ることを決める。
苑香は身を引くように『もう結婚しようとしてくれなくていい』と言ったが、俺の方にあきらめる気持ちは毛頭なかった。
「単なる同情でそばにいるんだと思われたくない。俺は、きみのことが好きだ」
苑香も俺の気持ちはほとんど察していたと思うが、初めてきちんと言葉にして伝えた。
これまでなんとか俺を遠ざけようとしていた彼女も、覚悟を決めたように自分の気持ちと向き合うと言ってくれた。
意地っ張りな苑香がようやく心を開こうとしている。このチャンスを逃してはいけない。
あとは彼女を悩ませる原因をすべて取り除いて、一点の曇りもなくきみを愛していると、信じてもらうだけだ――。