ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 再びタクシーに乗り込んだ俺は、実家へと向かう。

 いわゆる高級住宅街と呼ばれる地域にある実家は、広々とした洋館だ。

 庭師を雇い常に手入れされた状態の庭は、イングリッシュガーデン風。今はバラが咲き乱れているが、苑香と一緒に訪れたバラ園の花の美しさには敵わない。

 それはバラそのものの品種や状態が理由ではなく、一緒に見る相手が誰であるかによって、景色の見え方が変わるせいだろう。

 苑香が隣にいれば、空の青さも草木の緑も、そして咲き乱れる花の美しさも、より色鮮やかに俺の心を彩ってくれる。

 だからこそ、俺は彼女と結婚したいのだ。

 タクシーが実家に到着すると、絶対に揺らぐことのない苑香への気持ちを胸に携え、俺は巨大な門をくぐった。

「おお、統。来たか」
「こんばんは統さん。今、私たちの結婚式について、お父さまにご意見をちょうだいしていたところなんです」

 リビングのドアを開けると、問題のふたりが笑顔で俺を出迎えた。

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