ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「死別というパターンでなくても、長く人生を共にする夫婦には、色々な問題がつきまとう。本当に愛する相手と結婚するより、ビジネスパートナーだと割り切った関係の方が、余計な精神力を使わずに済むだろう。だから、蘭子さんと一緒になった方がいいと言っているんだ。彼女も、とても建設的な考えだと賛成してくれているよ」
父が蘭子さんに好意的な視線を向ける。蘭子さんは恐縮したように体の前で手を組み、控えめな上目遣いで俺を見つめた。
「私、統さんに好かれようだなんて図々しいことは思っていません。ただ、妻になってあなたを支え励ましたいだけなんです。ですから、どうか……結婚のこと、前向きに考えてはいただけませんか?」
ふたりは同じ考えのようだが、俺にはとうてい建設的な意見だとは思えない。
父はそれほどつらかったのだと理解することはできても、俺と父とは別の人間だ。
自分の人生をどうするかは、自分で決める。
「悪いが、俺は従えない」
深呼吸をしてから、ハッキリと告げた。父が困惑気味に俺を見る。