ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「統、私はなにもお前に不幸をしようとしてるんじゃない。むしろお前が幸せでいるための提案で――」
「俺にとってその提案はまったく幸せにつながらないと言ってる」

 愛する人のために心を砕くことをあきらめたら、きっと未来は彩を失う。いつか想像した花の存在しない世界のように、殺伐として味気ないものになるだろう。

「父さんだって、本当は知っているはずだ。愛する人とともに生きる世界がどんなに眩しく、幸せに満ちているのかを。病に倒れた母さんをどうにか笑顔にしようと花を選び贈り続けたのがその証拠だ。見舞いに行った回数こそ俺の方が多いかもしれないが、病室に飾られた花を母さんはいつも俺に自慢した。それは、父さんの愛情をきちんと感じていたからだろう? そこにあった夫婦の絆まで否定するようなことを言わないでくれ……!」

 最後は怒鳴るようにして訴えた俺に、父の目が見開かれ、戸惑ったように揺れる。

「違う……私は、ただ……」
「心配してくれるのはありがたいし、父さんの親心なんだろうとわかってる。だけど……俺と俺の選んだ相手を信じてほしい。きっと幸せな結婚生活にしてみせる。なんたって俺は、昔から理想の夫婦を一番そばで見て育ってきたんだからな」
「統……」

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