ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「別れたいってこと?」
『それ、俺の口から言わせようとするのもずるいよ。苑香さんの気持ちはとっくに俺から離れてるくせに』
「そんなことないよ……! 今日だって、他の誰でもなく遼太くんに誕生日のお祝いをしてほしいからこうして……」
私が感情的になればなるほど、電話の向こうで彼がうんざりする気配が伝わってくる。遼太くんはきっともう、自分の中で結論を出しているのだ。
『……悪いけど』
ため息混じりの覇気のない声。その前置きだけで、私は彼との恋の終わりを悟った。
『今、別の女の人の部屋にいるんだ。苑香さんと同じくらい年上だけど、仕事より俺のことを優先させてくれる人』
振られるのは覚悟していたが、もう別の相手がいるなんて予想外で絶句する。
年上の相手を選んだのは、私への当てつけなのだろうか。
思わずそんな考えが頭をよぎったが、すぐに被害妄想じみた自分の考えを恥じた。
一度は好きになった相手をこんな風に思うなんて、心がすさんでいる証拠だ。
「そう……。ごめんなさい、私では遼太くんの心の隙間、埋めてあげられなかったね」
泣きたい気持ちを封じ、明るく謝罪する。