ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「ひと言の相談もなく勝手にこんなものを依頼して……どうせ、苑香を傷つけるつもりでわざとやったんだろう。そんな醜い心の持ち主が俺を支え励ましたいって? 笑えない冗談はやめてくれ。俺との結婚に執着していたのもどうせ、この家の金や社長夫人という肩書きが欲しかっただけなんだろ?」
じりじりと彼女に歩み寄り、その目を見据える。
怯えたように後ずさりをしていた蘭子さんは、やがてきゅっと唇を引き結び俺を睨んだ。
「あ、あなたなんて、こっちから願い下げです。それに統さんも苑香さんも、性格の悪さがそっくりでお似合いだわ!」
「……性格の悪さ?」
こうしてやり合っている俺に対して言うのはわかるが、なぜ苑香まで。
「昼間、その見積書の件で彼女と少し話したんです。……あぁ、思い出しただけでムカムカするわ。選ばれし名家に生まれた私に対して、一般人のくせにあの失礼な物言い……」
蘭子さんはわなわな震えて怒りをあらわにしているが、俺は思わずクスッと笑ってしまった。
すかさず彼女が俺を睨みつける。なにがおかしいんですかと、とびかかってきそうな形相だ。