ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「いや、失礼。聡明な彼女に口で勝てず、生まれた〝家〟でしか対抗できないあなたの姿が簡単に想像できてしまいました。さぞお悔しかったでしょうね」
図星だったのだろう。怒りか羞恥か、蘭子さんの頬がかぁっと真っ赤に染まった。
「お、お父様に言いますから、私……! 瀬戸山園とも美吉ブロッサムとも、今後一切取引しないようにと!」
「どうぞご勝手に。ヒステリックな娘のせいで魅力的な取引先をふたつも失うお父様には同情しますけどね」
「……統。それくらいにしなさい」
見かねた父親が俺たちの間に入ると、蘭子さんはフンと顔を背けてリビングを出て行く。
派手な音を立てて扉が閉まった後、俺はようやく息をついて傍らのソファに腰を下ろした。父が苦笑しながら口を開く。
「彼女の父親には、私から後で謝罪しておくよ。ところで苑香さん……だったか? 彼女はすごい女性だな。美吉ブロッサム、私たちのような老舗でもちょっと怯んでしまいそうになるほど、短期間で成長著しい会社だ」
父の口から美吉ブロッサムの評価を聞くのは初めてだが、まるで自分が褒められたかのように誇らしくなった。
苑香に聞かせたらきっと喜ぶだろう。