ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます～全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました～

「ああ。彼女はやりたいと思ったことはすぐやろうとするから危なっかしいところもあるが、時代の潮流に乗った戦略を立てるのがうまい経営者だ。しかも、その根底に花に対する深い愛情があるから、単なる一過性の流行で終わらせない力もある」
「お前が競合他社のことをそんなに褒めるとは珍しい。正直なところ、彼女だけでなく彼女の会社も欲しいんじゃないか？」

　父にそう言われて、思わず目を瞬かせた。

　確かに俺は美吉ブロッサムという会社に魅力を感じている。今はまだ人材も資金力も十分とは言えないが、そこをクリアすればもっと……

　例えば瀬戸山園という後ろ盾があれば、苑香のやりたいことを存分に実現させてやれるのではないだろうか。

　もちろん、苑香本人や社員たちの同意があれば、だが。

「……そうだな。選択肢として考えてもいいと思ってる。ただ、俺はまだちゃんと彼女にプロポーズしてないから、そっちが先だ。父さんとあのお嬢様の説得を終えてからじゃないと、彼女を安心させられないと思ったからな」