ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
彼にも事情があるのだろうと自分から連絡するのも控え、一週間余りが経過した。
カレンダーは七月に変わり、美吉ブロッサムの店舗ディスプレイも夏らしい色鮮やかな花が中心になった。
暑さに強い熱帯地方の蘭、通年出回るものの夏が旬の百合、夏の花の代表ともいえる向日葵など、美しいだけでなく見ているだけで元気がもらえそうな花々ばかり。
気分を明るくするために、私も今日はなにか買って帰ろうかな。
開店準備をする一階の店舗を横目にそんなことを思い、スタッフに軽く挨拶をしてからエレベーターでオフィスに向かう。
社長室に続く廊下を歩いていたところで、後ろからカンナに呼び止められた。
「苑香……!」
彼女はどこか焦った様子でこちらに駆けてきた。
「おはようカンナ。どうしたの、そんなに急いで」
「不動産屋から朝一で連絡が入って、あの店舗……売れちゃったって」
「えっ? ……旧美吉ブロッサムの?」
思わず眉根を寄せる。祖父母の美吉ブロッサムが閉店した後、そこには長い間別の惣菜店が入っていたから、これまで購入をあきらめていた。
しかし、その惣菜店が春先に閉店したと知り、現在思い出の店を買い戻す準備を進めているところだった。