ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
もちろん、立地条件は今の美吉ブロッサムに合っているか、物件購入とリフォームのための予算はどうするか、人手の確保はどうするか検討を重ねた。
そして最近、ようやく購入のめどが立っていたところだったというのに。
「うん。これまで他に狙ってる人がいるとは言われてなかったから、こっちも仮押さえまではせず店舗の図案ができてから本格的に購入の相談をしようと思っていたのに……突然即金で購入したお客さんがいたみたいで」
花を買って元気を出そうと考えていたところにさらに落ち込むニュースが入り、私はショックを隠し切れなかった。
経営者としては、思い出の場所にこだわる必要はないとすぐに切り替えるべきなんだろうけれど……気持ちはそう簡単に割り切れない。
「そっか……残念。もうちょっと早く色々準備すべきだったのに、相手の方が決断力もお金もあったんだねきっと。カンナには色々動いてもらったのに、無駄になっちゃってごめん」
「そんなこと気にしなくていいわよ。いつかまたあの物件が空くかもしれないし、あきらめないで頑張りましょう! ぬか喜びだった三百万円の装花こともあるし」