ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「だからね、政略結婚の話、もしかしたら苑香を傷つけちゃうかもってわかっていたのに話した。もちろん、瀬戸山さんがフラフラしている可能性も考えて、腹が立ったっていうのもある。だけど、心からの親切でアドバイスしたわけじゃなかった。苑香には男より仕事を取ってほしいって、自分勝手な思いがあったの。……本当にごめんなさい」

 後悔を滲ませながらそう語ったカンナが、深く頭を下げる。

 でも、私は全然気にならなかった。

 彼女が抱いてしまった複雑な感情は、同僚、親友、仲間、そんな言葉では足りないくらいの深い絆が、私たちの間にあるからこそだと思うのだ。

「カンナの気持ち、私にもなんとなくわかるよ。遼太くんとダメになった時も、統に惹かれる気持ちを抑えようとしていた時も、私には美吉ブロッサムがある、カンナや左木くん、右原さんたち仲間がいると思えば心強かった。中でもカンナはやっぱり特別な存在だから、カンナが先に結婚を決めていたとしたら、おめでとうと言いつつやっぱり複雑だったと思う」
「苑香……」

 顔を上げたカンナが、感極まったように瞳を潤ませる。

 私に対してネガティブな感情を抱いていたことに、彼女自身苦しんでいたのかもしれない。

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