ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
もしかして、統?
ぱたぱたとスリッパを鳴らし、モニターの前に急ぐ。
しかし、映った三人の姿を見て、期待に膨らんだ胸はしゅうっと萎んだ。
「……なんの用だろう?」
そこにいるのはどう見ても、私の家族だった。
なにか約束していたっけ?
咄嗟に記憶を辿るものの、まったく思い当たらない。不審に思いながらマイクをオンにした。
「みんな、どうしたの?」
『よかった~、お姉ちゃんが家にいて。とりあえず開けてよ』
代表して口を開いたのは、三歳年下の妹、襟香だ。
都内で会社員をしていて、趣味は週末のスイーツ食べ歩き。今日は両親もそれに付き合ってきたとか?
後ろにちらっと見える父の手が、ケーキ屋の箱を抱えているし……。
「わかった。ちょっと待って」
戸惑いが拭えないものの、彼らを家に招き入れる。
普段は妹もひとり暮らしをしているので、家族四人で顔を合わせるのはお正月以来だ。
「苑香、急に来て悪いな」
「ううん、別に休みだったし大丈夫だけど……みんな揃って来るからびっくりしたよ」