ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「お姉ちゃん、紅茶勝手に淹れてるよー」
「うん、それは別にいいけど……」
「苑香、お皿の場所を教えてちょうだい」
「はいはい。……もう、落ち着いて悩むこともできやしない」
疲れたようにため息を吐きつつも、クスクス笑いがこぼれた。こんなに賑やかな雰囲気は久しぶりで、どこか懐かしい。
私が祖父母の店を手伝う時や美吉ブロッサムを復活させたいと相談した時はいい顔をされなかったけれど、普段は別段仲が悪いと言うわけでもなく、ごく普通の平和な家庭だったのだ。
「お姉ちゃんってすごいよね。昔から有言実行で」
「えっ?」
私と妹はキッチンのカウンターで、父と母はリビングで紅茶とケーキを味わっていると、隣で妹が唐突に私を褒めた。
今まですごいなんて言われたことがなかったので、耳を疑う。
「まさか、本当に花屋で成功しちゃうなんてお母さんもびっくりよ。さすが私の娘っていうより、カッコよすぎて誰の娘だったかしらと思うくらい」
「ど、どうしたのよ急にみんな」
母までらしくないことを言い出すので動揺してしまう。
黙々とケーキを食べていた父が、ふとフォークを置いた。