ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「苑香が昔から花屋と花が大好きなのは知ってたけど、お父さんな、絶対にいつか実家に帰ってきて、俺たちに泣きついてくると思ってたんだ。『やっぱりちゃんと就活すればよかった。お父さんたちの意見は正しかった』って、そしたら、『だったらうちにいていいから、一緒に仕事探そうな~』って、ようやく苑香のこといい子いい子できると思ってな」
遠い目をして語る父。よくわからない妄想に寒気がして、思わず自分の二の腕をさする。
「いい子いい子……?」
「お父さん、苑香が自分より自分の親になついてたのが寂しかったのよ。その上苑香は人より自立心旺盛で、さっさと家を出て自活を始めちゃったから……」
「さらに残酷なことに、お姉ちゃんは実家に泣きつくどころかどんどん実績を残して、社長としてますます輝いていくばかり。お父さんとしては、昔自分が花屋を継がなかったことの罪悪感もチクチク刺激されて、複雑だったんだよね」
母と妹の補足説明に、父は肩を竦めて気まずそうな笑みを浮かべる。
わが父ながら、結構こじらせていたのね……。