ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「えーっと……。お父さん、なんかゴメン」
「いや、いいんだいいんだ。結果的にあの場所に苑香の店が復活するって聞いて、お父さん素直に嬉しかったから。嫁にいくことに関してはまだショックから立ち直ってないけど」
「ちょっとお父さん! その話、まだダメ!」
父の話を遮るように、目を吊り上げた妹が叫ぶ。母も呆れた顔をしていた。
「もうっ、せっかくの瀬戸山さんのサプライズが台無しよ」
「ちょっと待て、母さんこそ、今のサプライズ発言はデリカシーの欠片もないじゃないか」
やかましい家族の会話を聞きながら、私はひとり混乱していた。
あの場所に私の店が復活するって、どういうこと?
それに、『嫁にいく』とか『瀬戸山さんのサプライズ』とか、激しく気になるフレーズばかり聞こえたけど……。
と、その時、カウンターに置いていた私のスマホが震える。
画面を見た瞬間ドキッと心臓が飛び跳ねる。待ちわびていた統からの電話だった。
スマホを手に騒がしさから逃れるようにサンルームへ移動し、高鳴る胸に手を置いて電話に出た。