ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「もしもし……?」
『久しぶりだな。元気にしてたか?』

 友人のように気軽な挨拶をする彼に、少しムッとする。

 こっちは毎日やきもきしながら待っていたというのに……。

「元気……じゃないわよ。誰かさんのせいで」
『どうした、珍しく素直じゃないか』
「あのね、あんな風に別れたまま二週間以上連絡が来なかったら、誰だって不安になります」

 せっかく連絡がついたというのに、待たされた不満をぶつけずにはいられない。

『苑香』
「……なによ」
『本当にきみはかわいいな』

 私の文句に対する返答としては、あまりにちぐはぐな言葉。

 なのに統の甘い声は、鼓膜を通して私の中に沁み渡っていき、胸をドキドキさせる。

「ど、どうせ馬鹿にしてるんでしょ」
『なんでそう思う。本心から言ってるのに』
「だって……あれから時間が経ったせいか、自信がなくなってきて……」

 統は一度、きちんと私の目を見て『好きだ』と言ってくれた。

 あの時の彼の気持ちに偽りはなかったと思うけれど、今も変わらず私を想ってくれているのか、日に日に不安になっている。

 すぐに返事をしなかった自分が悪いのは百も承知だけれど、もう一度、『かわいい』よりもっと確かな言葉を、彼の口から聞きたい。

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