ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「いやー、両親の店そのものだな」
「私は数えるほどしか行ったことがなかったけど、やっぱり懐かしいものね」
「いい感じに昭和レトロって感じで、今逆にバズるかもね。商品のお花も映えそう」
しみじみと感慨に浸る彼らの横で、私はいまだに混乱していた。
だって、この物件は私の会社が購入の手筈を整えている最中に他の人に取られてしまったはずで、私もカンナも残念に思っていた。
それなのに、この店の看板は美吉ブロッサムの名を掲げている。そんなことができるのは物件を手に入れた本人だけだ。
つまり、この店を買ったのって――。
半信半疑で瞬きを繰り返していたその時、目の前のシャッターがゆっくり開き始めた。
ガラス戸の向こうに見える店内には明かりがついていて、どうやって手配したのか、売り物らしき花まで並んでいる。
その美しい花々を背負ったようにして立つすらりと背の高い統の姿が、ひときわ輝いて見えた。
「じゃあね、苑香。私たちはそろそろ行くから」
「えっ?」
ポンと肩を叩かれ、振り向いたら母がにっこり微笑んでいた。