ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
父と統が〝ある場所〟で知り合ったというのは、ここだったんだ。
次に入る店に興味を示していたということは、父は父で、自分の両親の店があった場所にやっぱり思い入れがあったんだろうな。
「そうだったんだ……本当にすごい偶然ね」
「今日のところはきみを驚かせたくて店を昔のように再現したが、どう使うかは苑香の好きにすればいい。この物件は、きみへのプレゼントだ」
バッグやアクセサリーのプレゼントと同じような調子で、さらりと統が言う。
「えっ……?」
聞き間違いかと思い、彼を見つめ返す。統はそんな私の考えを否定するかのように静かに頷いた。
私が大好きだった、祖父母の店。当時の懐かしい思い出まで蘇ってくるような感覚に、否応なく胸は熱くなる。
だけど……。
私は少し考えてから統をまっすぐ見つめた。
「こんなにすごいプレゼント、受け取れない」
「それは遠慮か? それとも別の理由?」
統は驚いた風でもなく、静かに首を傾げた。