ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「統が私のためにプレゼントすると言ってくれた、その気持ちはうれしい。だけどここは、いつか自分の手で取り戻してお店を復活させようと願ってきた大切な場所なの。だから、こんな形で手に入れてもうれしくない。今の持ち主が統であるなら、正統な手続きを経て、きちんとあなたから購入したい」
くれると言っているのだから、もらっておけばいい。
そんな考え方があるのも理解するし、資金が潤沢にあるとは言えない美吉ブロッサムにとっては、無償で店舗用の物件が手に入るなんて棚からぼた餅的な幸運だ。
だけど、私は誰かに用意された道を歩くのは嫌なのだ。
これまでと同じように、自分の大切な仲間と共に悩み、時に立ち止まりながら、自分たちだけの新しい地図を作りたい。
統がふっと、苦笑を漏らした。
「苑香らしい選択だな。そういうことなら、きみの意思を尊重する」
「統……ありがとう」
彼のこういうところが本当に好きだな、と思う。
私が間違っていると思えば遠慮なく言ってくれるし、そうでなければ私の意見をきちんと尊重し、そっと背中を押してくれる。
だから、私も肩ひじ張らずに、彼と本音で接することができるのだ。