ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「さて、せっかく店内には本物の生花を用意しているんだ。きみのために花束を作ろう。それなら受け取ってくれるよな?」
統がそう言ってドアを開け、私を店内に促す。一歩足を踏み入れただけで、ふわりと甘い花の香りに包まれた。
実際に営業している店のように、多種多様な花々が揃っている。
「うん。ここにある花、好きなように使っていいの? だったら、私も統のためになにか作りたい」
「……いいな、それ。リクエストも可能か?」
「もちろん。なにか使ってほしい花があるの?」
なにげなく問いかけ、彼の顔を覗き込む。統はほとんど間髪入れずに答えた。
「紫陽花をメインにしてほしい。用意してあるはずだ」
「わかった。紫陽花の花、私もすごく好き。それに思い出の花でもあるし」
紫陽花はどこにあるのだろうと、統から離れてさっそく店内をあちこち見て回る。
しばらくして、彼のクールなたたずまいに似合いそうな、つゆ草の色に近い青い紫陽花を見つけた。
花が差してあるバケツのそばにしゃがんで、茎に手を伸ばす。