ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
そういえば、バラ園でのデートの帰り、彼のマンションに寄った時……寝室のコルクボードに、美吉ブロッサムのショップカードによく似たものが飾ってあった。
嘘みたいな話だと思う。だけど、穴が開くほど統を見つめていると、当時の彼の面影がどんどん蘇ってくる。
「あの高校生って、もしかして統……?」
彼は〝やっと思い出してくれたな〟と言いたげに微笑んだ。
信じられない偶然に胸が熱く震えて、花束を作る手はすっかり止まっていた。
以前、瀬戸山園を継ぐきっかけは私の接客を受けたからだと、彼は話していた。
なんとなく大人になってからのことだろうと想像していたのに、まさか、あの頃の未熟だった私が彼の人生に影響を与えていたなんて。
「もう一度会いたいと思って店を訪れた時にはもう店は休業に入っていて……しばらくして閉店してしまった。それからもずっときみのことが気になっていたから、同業だからというだけじゃなく、苑香の情報を追いかけてた。矢代先生のイベントで偶然会えた時は、奇跡じゃないかと思ったよ」
噛みしめるように言葉を重ねながら、統が一歩一歩、私の元へ近づいてくる。
その手に抱えている花は、向日葵ばかりが十二本。長年花屋の仕事に携わっているので、その本数に特別な意味が込められているとすぐに気がついた。
あたたかい幸福が溢れて、胸がトクンと鳴る。