ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「ああ。俺は経営者としてきみの会社を評価してるし、客としても魅力的な企業だと思ってる。だから、苑香がやりたくてもできないこと……たとえば、バラ園で味わったスムージーのような食品系の企画なんかも、うちの会社の資金や人材、ノウハウがあれば叶えてやれる。美吉ブロッサムが瀬戸山園のいちブランドとして成長すれば、お互いに取ってメリットしかないと思っていたんだ」
美吉ブロッサムを、瀬戸山園のブランドのひとつに……?
そうなった場合、彼の言うようなメリットは確かにたくさんあるのだろう。
今までお金をかけられなかった広告も大々的に出せるし、瀬戸山園なら各地の花農家とも太いパイプで繋がっている。
合併の形態にもよるだろうけれど、社員たちの待遇も悪くなるということはないはずだ。
だけど、そういう対価があったとしても私は……。
俯いて返事ができずにいたら、統がそっと私の手を握る。顔を上げると彼の優しい眼差しが降り注いでいた。
「苑香の気持ちはわかってるから大丈夫だ。さっきあの店をプレゼントとしてすんなり受け取ってもらえなかったことで、俺もあきらめがついた。きみは自分の手で美吉ブロッサムを成長させて、その先で俺に――というか、瀬戸山園に挑みたいと思ってる。違うか?」