ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
統はどうして私の気持ちが手に取るようにわかるのだろう。
ここまで自分を理解してもらえる相手に出会えるなんてこと、そうあることじゃない。
胸の奥がきゅっと甘い痛みを覚えた。
「あなたの言う通り。私、統と結婚しても、どんなに愛し合っていても、やっぱりあなたとはライバルでいたい。そしていつか、あなたを超えたい」
「楽しみにしてる。でも、そんなに簡単に俺を負かせると思うなよ」
挑発的な笑みを向けられ、闘争心に火がつく。
見てなさい、瀬戸山統……いつか必ず、あなたをぎゃふんと言わせてみせる。
心の中で久々に彼をフルネームで呼んでみると、なんだか懐かしくて思わず笑いがこぼれてしまう。
とはいえ、瀬戸山人形を憎々し気に殴りつけることは二度とないだろう。その代わり、寂しい時にギュッと抱きついたりするのかもしれない。
想像するとなんだかおかしくて、統に気づかれないよう小さく笑った。
甘さ控えめなライバル同士の会話は、彼のマンションに着いてしまえばすっかり甘い男女のそれに変わった。
ダイヤの指輪が戻った指先で彼の背中にしがみつき、今はベッドの脇で立ったまま、互いの唇を夢中で吸い合っている最中だ。
彼のジャケットとネクタイは、乱雑に床に脱ぎ捨てられている。