ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「ああ。きみの体もそう言ってるな」
「は、恥ずかしいこと言わないでよ……」
「羞恥は捨てろと言っただろ? ほら、俺の目を見て、もっと感じて―――」
視線を絡ませたまま、統が一心に私を求める。
彼の一途な愛がこれでもかというほどに伝わってきて、嬉しいのに胸が苦しくなる。
甘いだけじゃない感情が湧くのは、彼を本気で愛し始めている証拠だ。
統の存在が段々と、私の一部になっていく……。
その尊い感覚を噛みしめるように、激しく軋むベッドの音を聞きながら必死で彼と抱き合った。
離れがたくて結局彼の部屋に泊まることになったその夜。眠る前にベッドの中で、彼のお母さんの話を聞いた。
私と初めて会った日、彼が紫陽花の花束を渡そうとしていたのは入院中のお母さんのためだったそうだ。
病気のせいで長くは生きられなかったけれど、花と共にあった人生はきっと幸せだっただろうと、統は語っていた。
「……私も、きっと自分の命が尽きる前には統の母さんと同じことを思い出すだろうな」
「同じことって?」
「あなたにプロポーズされた今日のこと。たくさんのお花に囲まれて、大切な人と一緒に生きようと決めた気持ち、絶対に忘れない」
そう言って彼の目を見ると、統はとても幸せそうに微笑んだ。
優しげな眼差しにキュンと胸が鳴り、次の瞬間、彼が私のおでこに軽くキスする。
「俺も絶対に忘れない。でも、きみと一緒にいれば、どんな平凡な日常だってきっと特別な毎日だ」
「統……」
愛情深い言葉に胸が詰まって、思わず彼の胸にギュッとすがりつく。
耳元に感じる彼の規則正しい鼓動に、この上ない安心感を覚えた。