ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「別にうちは社内恋愛禁止じゃないからいいじゃない。ふたりともお幸せに」
「でも、会議に痴話げんかを持ち込むのだけはやめてね」
私とカンナがそれぞれ声をかけると、左木くんを睨んでいた右原さんもなんとか落ち着きを取り戻す。
ふたりともきちんとした大人なので、それからは特に気まずさを醸し出すでもなく、フラットな状態で会議に参加していた。
会議を終えた後、ともに廊下を歩いていたカンナがふいに口を開く。
「あのふたりがカップルになって、苑香も瀬戸山さんと幸せそう。私が孤独なんじゃないかって、ちょっと心配してる?」
唐突な質問だったので目を瞬かせる。
だけど、彼女の言ったことを少しも考えなかったわけじゃないので、私は正直に頷いた。
「……お節介だったらごめん。でも、少しだけ」
人の生き方はそれぞれだし、恋愛や結婚に重きを置かずに生きていくことだって全然悪いことじゃない。
だけど、そう思っていたって、周りに影響されて焦ったり悩んだりすることは誰にでもある。私たちくらいの年齢ではとくにそうだろう。
カンナには前に複雑な胸の内を聞かせてもらったばかりだったから、気にしないわけにはいかなかった。