ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「その話、詳しく聞いてもいい?」
「ええ。立食形式の自由なパーティーだったんだけど、最初に声をかけてきた相手が、とにかくすごく気持ちの悪い人でね。年は中年くらいかな。自分はマスコミ関係で芸能界に顔が利くだの、ちょっと前のカーネーション王子のゴシップ記事? あれも自分が書いたのなんだのって自慢ばかりするうえ、人のお尻ジロジロ見て『お姉さんは安産型だね』って……もう、完全にアウトのセクハラな発言連発なわけよ」
セクハラ全開、職業マスコミ、しかも、絶賛婚活中。
まさかそんな偶然があるわけないよね……。
自分が二度ほど会った失礼な中年男性の顔を思い浮かべて一瞬ゾゾッとしたが、話の本筋とは関係なさそうなのでとりあえず黙っておく。
「それで、その人からさりげなく離れようとしてお手洗いに立ったのに、会場に戻ろうとしたらトイレの前で待ち伏せされちゃって。すごく怖かったんだけど、その中年男性の動きを怪しいと思ってたらしい主催会社の男性が、間に入って助けてくれたの」
「じゃあ、もしかして婚活パーティーで出会った気になる人っていうのは、参加者じゃなくて……」
「そう、その人のこと。あんなにときめいたのって久々だったから、お礼がしたいですって、グイグイ迫って食事の約束しちゃった」
カンナが小さく舌を出す。