ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「えーっ! やるじゃないカンナ」

 最近は恋愛に縁がなかった彼女だけれど、そういえば学生時代はわりと積極的な方だったっけ。

「だから、うまくいくかはわからないけど今すごく張りがある毎日なの。やっぱり、一歩踏み出してみるって大事だね。あのおじさんにも感謝よ」
「いや、そこは感謝しなくていいと思う……」

 小刻みにぶるぶる首を振る私に、カンナが思わず噴き出す。

 こんな風に屈託なく笑う彼女を見たのは久しぶりだったので、友人として嬉しくなった。



 忙しい日々の合間に結婚式の準備を進め、翌年の三月に私と統は婚姻届を提出した。

 挙式は同日の午後で、会場は瀬戸山園と取引のある外資系のラグジュアリーホテルだ。

 式を行う大聖堂、そして披露宴会場のバンケットルームを飾る豪華な装花はすべて瀬戸山園が手がけている。

 でも、ひとつだけどうしても美吉ブロッサムに用意させてほしいと頼んだものがある。

 式が始まる前、ホテルの控室で私がちょうど純白のウエディングドレスに身を包んだ花嫁の姿になった頃、仲間たちがそれを届けてくれた。

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