ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
指輪の交換、結婚証明書へのサインを終え、最後は家族や仲間に見送られながら、色とりどりのフラワーシャワーが舞う中を、統と寄り添って歩く。
ふと彼を見上げると、甘さを孕んだ眼差しに見下ろされ、耳元に唇を寄せられる。
「苑香は花が似合うな」
「……そ、そう?」
「ああ。こんなに綺麗な花嫁が俺のものだなんて、夢みたいだ」
幸福を受け止めきれないかのように、統が静かに呟く。
結婚式の独特な空気感、それに、こんなにたくさんの花びらが降り注ぐ光景は、確かに現実感が薄いのかもしれない。
だけど――。
「夢じゃない。私たちはもう、永遠に離れることのない夫婦になったんだよ」
彼の腕を掴んでいる手にキュッと力をこめる。こうして触れ合える距離に私はちゃんといるよと伝えるように。
「ああ、そうだな。夢だったらこんなこともできないし……」
まだ退場の途中なのに、統が唐突に身を屈めて私にキスをする。
参列者の中から黄色い声や拍手が飛び交い、かぁっと頬に熱が集まった。
「ちょ、ちょっと統……!」
唇が離れていくと、私はすぐに抗議の声を上げた。
「仕方ないだろ。苑香への愛が溢れて誓いのキスじゃ物足りなかったんだ」
甘すぎる発言でますます羞恥を煽る彼に頬を膨らませたくなる。
しかし、今日ばかりはつまらない喧嘩はしたくない。
「もう……」
あきれたように言いながら、仕返しに私からも短いキスをする。
統は不意打ちにあったように目を丸くし、じわじわと頬を赤く染めた。
してやったり、と笑う私は、きっと今だけ妻というよりライバルの顔。
私たち夫婦の関係はいつだって甘いだけじゃなく、スパイシーな刺激に満ちている。
FIN