ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「ですよね……。せめて、明日にしてくれればよかったのに」
「レストランでも予約してたのか?」
静かに首を横に振る。芸能活動をしている遼太くんに迷惑がかからないよう、私たちが会う場所はいつもどちらかの自宅だった。
「いえ。ただ、私のマンションで一緒にお祝いする約束だったのでケーキを予約していました。そのお店、当日キャンセル不可なんですよね……こんなことなら、見栄を張って五号のホールケーキにするんじゃなかったな」
過去に戻れるなら、ケーキと一緒に三十歳を表す太いロウソクを三本と【ハッピーバースデー 苑香】のプレートまで予約しようとしている自分を、全力で止めたい。
「ケーキの処理、手伝ってやろうか?」
「えっ……?」
「五号のケーキって、四、五人で食べる大きさだろ? 全部ひとりで食べたら血糖値が大変なことになるぞ」
両手の人差し指と親指で円を作った瀬戸山が、だいたいのケーキの大きさを予想して苦笑いしている。
しかし、私が動揺しているのはケーキの大きさのせいではない。