ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 私が瀬戸山統にそんなきっかけを?

 それって、いつのことだろう。最近の話じゃないよね……。

「あの、その話もっと詳しくお聞きしたいのですが」
「どうするかな。ケーキと紅茶でもあれば、話す気になるかもしれない」

 そういえば、ケーキの処理を手伝ってくれるとか言っていたっけ。

 このままタクシーに乗っていても料金がかさんでいくだけだし、瀬戸山の話も気になる。

 彼ほどの地位の人間が女性の家に上がり込んで乱暴する……なんて浅はかな行動は取らないだろうし、万が一危険な状況になったら、なんとか逃げたうえでその事実を逆手に取り、彼のスキャンダルにしてしまえばいいのだ。

 瀬戸山園の悪評が広まれば、美吉ブロッサムにチャンスが巡ってくる。

「わかりました。じゃあ、ケーキ屋に寄ってから私のマンションに行きましょう。今、住所を調べます」
「ああ、頼む」

 スマホの地図アプリでケーキ屋の場所を確かめながら、ちらりと瀬戸山の横顔を盗み見る。

 ちょっと優しくされたからって、簡単に落ちる私ではないんだからね。

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