ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
サンルームのある部屋で
「へえ。サンルームか。いいな」
リビングと繋がる日当たりの良いそのスペースを覗いて、瀬戸山が私を振り返った。ケーキを冷蔵庫にしまっていた私は、扉を閉めて彼の元へ歩み寄る。
「部屋を借りる時、そこだけはこだわったんです。生活の中に花や緑があると、やっぱり元気が出るじゃないですか。手入れは大変ですけど」
私の住まいは、祖父母の花屋があった文京区の住宅街にある低層マンション。
周囲に高いビルがないので日当たりがよく、一階の部屋でも南側は日差しがあたたかい。
ちょうどその位置にガラス張りのサンルームがあるので、趣味でガーデニングを楽しんでいる。あとは十二畳ほどのLDKと、六畳の寝室がひと部屋。
ひとり暮らしをするにはちょうどいい広さだ。
「変わってないな。そうやって、花や緑を無邪気に愛するところ」
サンルームの端にある棚、そこに並べてある寄せ植えのプランターを眺めて、瀬戸山が呟く。
濃いピンクのニチニチソウに、愛らしい白のマーガレット、背の高さがアクセントのルピナス。逆に低い場所で淡い紫の花を咲かせているビオラ。
植えてから二週間くらい経っているので、丸いプランターに合わせて花たちの形が綺麗に安定してきた。