ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「……自分では、対等な関係を築いているつもりだったんです」

 私は両手で持っていた紅茶のカップをソーサーに置き、話し出した。

「彼は私より四つも年下でしたけど、そんなこと一度も気にしたことはありません。会える時に会って、楽しい時間を過ごして……そうすれば、仕事とか日常生活の嫌なことにもまた立ち向かえるから、彼の存在が元気の源って感じで」

 でも、遼太くんの方はそうじゃなかった。私のことを『勝手だね』と言っていた。

 知らず知らずのうちに、色々我慢させてしまっていたのだろう。

「仕事も大事、恋も大事って、パートナーにうまく伝えるの難しいですよね……。私の場合たぶんそれがとても下手で、誤解させてしまったんだと思います。彼の今の恋人は、仕事よりも彼のことを優先させてくれる人だそうなので、今度こそその人と幸せになってくれるといいんですけどね」
「もう新しい相手がいるのか」
「もう……というか、お付き合いがかぶっていた時期もあったんじゃないかな。それに気づけない私も私ですよね。彼のこと、ちゃんと見ていなかった証拠です」

 自嘲気味に言ったものの、鼻の奥がツンとして視界が揺れた。

 こうなってしまう前に、遼太くんの変化に気づけなかった自分が憎い。

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