ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「とにかく、俺はきみが腐っているところは見たくないんだ。早く立ち直って、また俺のこと強気な目で睨んでくれ」
食べかけのケーキに視線を落としていたら、不意に隣から伸びてきた彼の手に顎を掬われ、強引に彼の方を向かされる。
瀬戸山の美しい瞳にまっすぐ見つめられると、鼓動が騒いだ。
い、いや、なぜこの男にドキッとしているのよ……。
「睨まれたいって……瀬戸山さん、ドMなんですか?」
パッと顔を逸らして彼の手から逃れ、わざと冗談っぽく言った。
平静を装っているが、心臓はまだ激しく暴れている。
「いや、どちらかというとその逆だな」
「逆……」
ってことはSってこと?
それはそれで彼に似合いすぎていて動揺する。暴力をふるうとかではなく、口の巧さで獲物をじわじわ追い詰めて、逃げ場がなくなったところで一気に仕留める感じ……。
つい、ベッドの上で四つん這いになり女性を追い詰める瀬戸山の姿が脳裏に浮かんだ。
「なんか変な想像してるだろ」
「……し、してません! 断じて!」
まさに獲物を射る狼のごとく鋭い瞳にジッと見られ、心臓が縮こまった。
酔っているわけでもないのになにを馬鹿な妄想してるんだろう、私……。