ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「苑香は? どっちが好みなんだ?」
「はい?」
「いじめるのと、いじめられるの」
「そんなのどっちも嫌に決まってるでしょう!」
ムキになって反論すると、瀬戸山はおかしそうにクスクス笑った。
もう、からかわないでよね……。
この人の相手をしていると、過剰に疲れる。素面じゃやっていられないかも。
「そういえば、愚痴の聞き役になってくれるんでしたよね?」
「ああ。俺でよければ存分に吐き出してくれ。全部受け止める」
そう言った時の瀬戸山には茶化すような雰囲気はなく、調子が狂ってしまう。
本気で私を励ましてくれようとしているの……?
すべてを信用したわけではないが、彼に心を許しかけている自分を感じる。
私は席を立ってキッチンの方へ回ると、朝から冷蔵庫に入れていたシャンパンを出して、彼に見えるように持ち上げた。
「今日、実はケーキだけじゃなくてシャンパンも用意していたんです。ひとりでは飲みきれないので、付き合ってくださいませんか?」