ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「苑香は? どっちが好みなんだ?」
「はい?」
「いじめるのと、いじめられるの」
「そんなのどっちも嫌に決まってるでしょう!」


 ムキになって反論すると、瀬戸山はおかしそうにクスクス笑った。

 もう、からかわないでよね……。

 この人の相手をしていると、過剰に疲れる。素面じゃやっていられないかも。

「そういえば、愚痴の聞き役になってくれるんでしたよね?」
「ああ。俺でよければ存分に吐き出してくれ。全部受け止める」

 そう言った時の瀬戸山には茶化すような雰囲気はなく、調子が狂ってしまう。

 本気で私を励ましてくれようとしているの……?

 すべてを信用したわけではないが、彼に心を許しかけている自分を感じる。

 私は席を立ってキッチンの方へ回ると、朝から冷蔵庫に入れていたシャンパンを出して、彼に見えるように持ち上げた。

「今日、実はケーキだけじゃなくてシャンパンも用意していたんです。ひとりでは飲みきれないので、付き合ってくださいませんか?」

< 36 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop