ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 瀬戸山も暇な人ではないから、お茶会以上のことは断られるかもしれない。

 少し緊張しながら返事を待っていたら、彼はふっと笑った。椅子から腰を上げ、ゆったりとキッチンに入ってくる。

「もちろん、付き合うよ。というか、きみは今日誕生日なんだからもっと堂々とワガママを言えばいいんだ。俺にできることならなんでも叶えてやる」

 そんな言葉の後、大きな手がポンと頭の上に乗った。

 意外なほどの優しさを向けられ、つい瞳が潤んでしまいそうになる。

「……あ、ありがとうございます」
「グラスどこだ? せっかくだから、なにか料理も注文するか」

 言いながら、瀬戸山はスマホを取り出してデリバリーの料理を調べ始める。

 ……変なの。取引先になるかもしれなかった矢代先生を奪われたうえ、お節介に会社の現状を心配された時には〝なんて嫌なやつ……!〟と思ったのに。

 そんな相手と一緒に、大切な誕生日を過ごそうとしているなんて。

「苑香はなにが食べたい?」

 考え事をしていたらふいにスマホを差し出され、反射的に覗き込む。

「えっと……私は」

 言いながら彼の方を向いたら、予想以上に顔が近くにあって息が止まりそうになる。

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