ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「美吉ブロッサムの店舗はどこも外壁をレンガ調のタイルにしているんです。祖父母の店がそうだったので、そこだけは統一感を持たせたくて。一時期は他の人の手に渡っていた昔の店の物件も、最近空いたみたいなので取り戻したいと思ってるんですよね」

 気持ちよくお酒に酔っている時、仕事の話をしてしまうのは私の癖だ。

 普段は自重する青くさい発言も不思議とできてしまう。

「今、お祖父さんとお祖母さんは?」
「私が高校生の頃にふたりとも病気で……。昔の美吉ブロッサムが閉店したのも、立て続けにふたりが亡くなってしまったからなんです。祖父母はとても仲良しでしたから、先に亡くなった祖父が祖母を呼んだんだと思います。両親は店を継ぐ気がなかったので、そこで一度、美吉ブロッサムは終わってしまいました」

 実家が花屋だったにもかかわらず、私の父は花があまり好きではなかった。

 子どもの頃は店を手伝っていたらしいが、水仕事は冷たいし手が荒れるし、棘がある花で怪我をしてしまうこともあるしで、いつもうんざりしていたそうだ。

 その上あまり儲けがある店ではなかったから、家計についての不満もあったようだ。自分は絶対に花屋なんかやらずにサラリーマンになると言い続け、現在父は花とは無縁のIT企業に勤めている。

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