ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 美吉ブロッサムはどちらかというと若者をターゲットにした店づくりをしているが、今後のことを考えるとそれだけでは伸び悩むだろうというのが、私を含め経営陣の共通の意識だった。

 もっと上の世代にも興味を持ってもらうためにはどうしたらいいか。

 会議で意見を募ったところ、華道家の矢代先生とのコラボ、という案が出た。

 というのも、矢代先生は時々生け花で使う花卉(かき)材料――通称花材を、美吉ブロッサムの店舗で買い求めてくれることがあるそう。

 それを店舗スタッフから聞いた社員が、協力を頼めないかと思いついたそうだ。

 コラボと言っても派手な演出をするわけではなく、先生には私たちの会社が提供した花材でいつも通り生け花をしてもらい、その作品を広告に使う。

 多くを語らなくても先生の作品なら人々の注目を集めてくれるだろうという、シンプルでストレートなやり方が私も気に入った。花屋の主役はあくまで花なのだ。

 とはいえ時々花を買いに来てくれる以外の繋がりがない矢代先生に、どうアプローチしようか。頭を悩ませていたところに、今日の内覧会の招待状が届いた。

 美吉ブロッサムの経営状況では広告代理店に宣伝を依頼する余裕もないため、自社のメンバーで地道にプロモーション活動をするのが基本。

 そんな中で巡ってきた、大きなチャンス。これを逃す手はない。

< 4 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop