ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
一方専業主婦の母は『花なんかもらっても食べられないじゃない』と、完全に花より団子のタイプ。
父が建てたマイホームには立派な庭があったのに、私が中学に上がる頃には母の意向で全部人工芝とコンクリートに変えてしまった。その方が虫も来なくていいから、と。
私だって虫は苦手だから気持ちはわかるけれど、家を建てた時に住宅メーカーからのお祝いで贈られた金柑の木まで抜かれてしまい、ショックだった。
夏に咲く上品な白い花の香りと、甘酸っぱい金柑の実を味わうのがささやかな楽しみだったのだ。
しかし、三歳下の妹も『金柑は種ばっかりだから好きじゃない』と言い、結局金柑を残したかったのは私だけ。三対一では勝ち目がなかった。
瀬戸山にもその話をした後、鬱々としたため息をふうっと吐き出す。
「だから、祖父母が畳んだ美吉ブロッサムを復活させたいと私が相談した時、家族は大反対でした。花なんて、なくても困らないものを売って儲かるわけがない。苦労するのは目に見えているんだからやめろって」
「……耳が痛いな。俺も、昔は似たような考えだったから」
「瀬戸山さんも?」
苦笑している彼の横顔に問いかける。瀬戸山園の創業家に生まれた彼は、子どもの頃からきっと素敵な花に囲まれて育っただろうに。
父が建てたマイホームには立派な庭があったのに、私が中学に上がる頃には母の意向で全部人工芝とコンクリートに変えてしまった。その方が虫も来なくていいから、と。
私だって虫は苦手だから気持ちはわかるけれど、家を建てた時に住宅メーカーからのお祝いで贈られた金柑の木まで抜かれてしまい、ショックだった。
夏に咲く上品な白い花の香りと、甘酸っぱい金柑の実を味わうのがささやかな楽しみだったのだ。
しかし、三歳下の妹も『金柑は種ばっかりだから好きじゃない』と言い、結局金柑を残したかったのは私だけ。三対一では勝ち目がなかった。
瀬戸山にもその話をした後、鬱々としたため息をふうっと吐き出す。
「だから、祖父母が畳んだ美吉ブロッサムを復活させたいと私が相談した時、家族は大反対でした。花なんて、なくても困らないものを売って儲かるわけがない。苦労するのは目に見えているんだからやめろって」
「……耳が痛いな。俺も、昔は似たような考えだったから」
「瀬戸山さんも?」
苦笑している彼の横顔に問いかける。瀬戸山園の創業家に生まれた彼は、子どもの頃からきっと素敵な花に囲まれて育っただろうに。