ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「ああ。苑香のご両親に似た考えだったかもしれない。花なんて見て楽しむだけか、せいぜい香りを嗅ぐくらいだろ。そのくせ、すぐに枯れてしまう。どうしてそんなに扱いづらい商材を、うちは先祖代々扱っているんだろうって」
花屋の息子だった父と同じで、昔から花に触れてきたからこそそう思うのかもしれない。
花は綺麗なだけではないと、実体験として知っているから。
でも、今の彼は瀬戸山園の社長だ。いったいいつ、考えが変わったんだろう。
「会社を継ぐことを決めたきっかけはなんだったんですか?」
「言っただろ。苑香だよ」
……確かに、さっきも似たようなことを言っていたけれど。
「それじゃ全然わかりませんよ。説明してください。ケーキも紅茶もお酒も用意したんですから」
「単純な話だよ。過去に一度、きみの接客を受けたというだけだ」
「私の接客を……?」
花が好きだった私は、両親があまりいい顔をしないのを知りつつも、子どもの頃から祖父母の店を手伝っていた。
花の名前も世話の仕方もそこで覚えたし、高校生にもなると花束を作れるようになった。もちろん、祖父母の監督の下だけれど。