ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
そして現在、新しい美吉ブロッサムでも、店舗の視察ついでに接客をすることは少なくない。
カンナには『働きすぎ』と怒られるけれど、祖父母の店でじかにお客さんと触れ合う喜びを知った経験があるから、どうしても定期的に店に立ちたくなるのだ。
……ただ、瀬戸山らしき人を接客した覚えはない。
「その時、なんの花を買ったんですか?」
「秘密」
「えーっ」
「むくれるなよ。大事な思い出だから軽々しく口にしたくないんだ。続きは、またいつか」
結局教えてくれないんじゃない……。
ムッとする私に彼も気づいているはずだが、軽く受け流して正面の壁にかかったドライフラワーを指さした。
「あれ、いい色だな。この部屋に合ってる」
壁と同色の白いワイヤーネットを取り付けてあるそこに、かつて生花だったカスミソウ、ミモザ、ラベンダーのドライフラワーを束ねて吊り下げ、インテリアにしている。
このドライフラワーは美吉ブロッサムの立派な商品でもあり、ネットショップで販売している。