ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
近い将来、うちもやりたいな……と口に出そうとしていたところだったので、釘を刺されて悔しくなった。
彼の言う通り、サブスクを展開するには色々なものが不足している。今でこそ苦労をかけている役員のみんなに、これ以上の負担を強いることはできない。
「仕事のことになるとつい焦ったり欲張ったりしてしまうの、私の悪い癖なんですよね。それとは逆に恋愛にはあまり執着してなかったから、遼太くんも不満が溜まっていたのかもしれません」
「遼太? ……ああ、前の男か」
そう過去形にされると、グサッとくるものがある。でも彼の言う通り、今の私と遼太くんはもう他人だ。
切ないのをごまかすように、グイッとシャンパンを呷った。
「なにがつらいって、テレビや雑誌、SNSを見ていれば絶対に遼太くんが目に入ってしまうことですよ……。すっかり人気者になっちゃって」
グラスが空になったのでソファを下り、ラグに膝をついてテーブルの上のシャンパンを手に取る。グラスに注ぎ直し、また一気飲みする。頭がふわふわしてきた。