ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「人気者? 相手は芸能界にでもいるのか?」
「ええ。彼が瀬戸山園の母の日イメージキャラクターでブレイクした時は、悔しかったのなんのって」
「母の日……もしかして、中路遼太か?」

 毎年違う男性タレントを起用しているとはいえ、いくつかのヒントから予測がついたのだろう。半信半疑に問いかけてきた彼に、私は大袈裟な拍手を送った。

 すでに別れているのだし、もう隠す必要はないだろう。

「大正解です」

 しかし、瀬戸山はまったく嬉しくなさそうである。それどころか、呆れたような目で私を見ている。

「苑香」
「はい?」
「きみは男を見る目がなさすぎる」

 突然のお説教モードに、きょとんとする。

「なんであなたにそんなこと言われなきゃならないんですか……」
「それは……いや、言わない。言ったらきみをまた泣かせることになる」

 ふい、と視線を逸らした瀬戸山の様子を見て、不安が押し寄せる。

 遼太くんのことについて、なにか知っているの……?

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