ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「私なら平気ですから、教えてください。遼太くんがなにかしたんですか?」

 ソファに座っている彼に近づき、スーツの袖を掴んで揺らした。

 瀬戸山は軽く目を閉じた後、まっすぐな視線を向けてくる。そして、大きな手を伸ばして私の頬に手を添えた。

 突然触れた彼のぬくもりにドキッと胸が鳴る。

「俺が平気じゃないんだ。言っただろ? 早く立ち直ってほしいって」

 吸い込まれそうな美しい瞳に見つめられ、顔中が熱くなってくる。

 ちょっと飲みすぎたかもしれない。にっくき瀬戸山が極上の美男子に見えるなんて……。

「ど、どうしてそんなに気にかけてくれるんですか? 同じ業界にいる、年の近い経営者同士だから……?」

 友と書いてルビはライバル、みたいな。

 そんな関係だと認めてくれているなら、密かにうれしいけれど。

「それも間違いではないが、同業者だからって誰彼構わず家に上がり込んだりしない。きみは特別だ」
「特別……」

 どういう意味なんだろう。アルコールのせいで思考がうまく働かない。

 やけに体が熱くて鼓動が速いのも、きっと飲みすぎた影響だろう。

 ゆっくり瞬きしながらただ瀬戸山を見つめていたら、彼が傾けた顔を近づけてきた。

 長い睫毛を伏せ、まるでキスをするみたいに……えっ、キス?

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