ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「どんなに迫られたって、もう恋なんかするつもりありません。自分には仕事とプライベートの両立は無理だって、今回のことで身をもってわかりましたから」
「そんなの、相手次第だろ」
「だとしても、いいんです。こういう風に感情が乱されて、いつもの自分じゃなくなっちゃうくらいなら……恋愛なんかしない方がマシです」
盛大なため息をつき、ソファの座面にぼふっと顔を埋める。
瀬戸山の手がポンと頭の上に乗り、優しく髪を撫でた。
「とりあえず、今夜はゆっくり休め。食欲ないなら、この辺の料理は後で食べられるように冷蔵庫にしまっておく。酒ももういいだろ? グラス洗うぞ」
「いえ、私が……」
「誕生日くらいワガママになっていいって言っただろ。俺は片付けたら帰るから、ちゃんと風呂に入って温まって、あと睡眠もしっかり取るように」
「……お父さんみたい」
キッチンでてきぱき後片付けをする瀬戸山を見ながら、ぽつりと呟く。
スポンジを泡立ててグラスを洗おうとしていた彼はふっと苦笑した。
「お父さん、ね。ライバルから昇格したと思っていいのか微妙だな」
「私のこと、本気でライバルだと思ってくれてるんですか?」