ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 えっ。今何時……?

 ローテーブルに置いていたスマホを見ると、午後十時を過ぎていた。

 もうこんな時間だったんだ。耳を澄ませると、かすかに雨の音も聞こえる。

 結局、昼過ぎからずっと一緒にいてくれたんだ……。

 失恋の痛みがゼロになったとまでは言わないけれど、どん底まで落ちずに済んだのはたぶん彼のお陰だ。

 おまけに仕事に対するエールまでもらってしまって、このままじゃ彼に借りを作ってばかり。

 ……なにか、お礼をしなければ。

「遅くまですみませんでした。明日はお仕事ですか?」
「気にするな。明日は一日オフだ」
「そうですか、よかった……。でしたら、あの」

 ゆっくり立ち上がって、瀬戸山の元へ歩み寄っていく。目の前まで来ると、不思議そうに首を傾げる彼をおずおずと見つめた。

「今から帰るの、大変でしょうし……泊まっていきませんか? あの、決して変な意味ではなく、今日のお礼に、明日は朝ごはんでも作らせていただけたらなって……」

 彼が朝ごはんを食べるタイプではなかったらどうしよう。

 というか、彼に恋人がいるかどうかも知らないし、シンプルに迷惑かな?

 うちにベッドはひとつしかないから彼に譲るつもりだけれど、私の使っているセミダブルベッドじゃ、瀬戸山の大きな体には少し狭い気もするし……。

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